十五歳の大人的権利
十五歳の誕生日おめでとうございます。
ぼくが十五歳のときには
「昔だったら元服の歳だな」
と、よく言われました。
皆さんのお父さん、お母さんはまだ若いから、たぶんそんなことは言わないでしょうね。
おじいちゃん、おばあちゃんだったら、もしかしたら言うかもしれません。
元服は、武家の時代の成人式のようなものです。
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そう、十五歳で大人として認められ、責任も負いました。
もしかして、やらかしちゃったときには、責任をとって腹を切ったかもしれません。
そんな十五歳、現代の社会で大人として認められることは、何かあるのでしょうか。
十五歳になったら、遺言を書けます。
印鑑登録をして、実印を作ることもできるようにはなりますが、法定代理人の承諾が必要など、あなただけの意思ではできません。
法定代理人というのは、
成人にならないとできない契約などの手続きを代わりにやってくれたり、
あなたが何かやらかした時には、代わりに責任をとって賠償金を払ってくれたりする、ありがたい人です。
多くは、皆さんの保護者と言われている人たちです。
遺言はあなただけの意思で作ることができます。
十五歳の唯一の大人的権利かもしれません。
遺書?遺言?何が違うの?
ここで「遺書」と「遺言」の違いをお話ししましょう。
これらを並べて字面、漢字の意味だけ見ると、
「遺書」なんだから、書けば遺書で、「遺言」なんだから、言えば遺言じゃないのって納得してしまいそうだけど、そこで納得してはいけません。
「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。」
と、いうのが遺書です。
「ぼくが死んだら、艦これグッズすべてを田中太郎君にあげる。抱き枕にしているダイオウグソクムシのぬいぐるみは花田花子ちゃんにあげる。」
と、いうのが遺言です。
そして、遺書は残された人に対するお手紙にすぎません。
お礼、お詫び、心残り、恨みつらみなどなど。
うまく行けば日本中を感動の渦に巻き込むことができるかもしれませんが、
「はいはい、ごくろうさん。」
と、ごみ箱に捨てられても、法律的には何の問題もないのです。
それに対して遺言は法律が守ってくれる、立派な書類なんです。
十五歳のあなたが作った書類を、裁判所などが法律で守ってくれるんです。
すごいでしょ。
遺言書を破ったり捨てたり隠したりすると、法律で罰せられるんです。
ただし、守ってくれるのは財産の事だけです。
花子ちゃんは一生ぼくのことを忘れないでください、
というのは
「3歩あるいたから忘れた。」
と言われても仕方がありません。
遺言自由の原則
遺言は、十五歳以上になれば、いつでもだれでも自由にすることができます。
また、たとえあなたがだれにも負けない優柔不断マンだとしても
いつでも撤回することもできるので安心してください。
しかも、その撤回する権利をだれも奪うことはできません。
ただし、撤回する時は、もう一度きちんと遺言として書かないといけません。
そして、あとから書いたほうが正しい遺言だというあつかいになります。
だから、書いた時がはっきりわからなければいけません。
遺言の方式
遺言というのは好き勝手に書いたら良いのかというと、そういうわけではなく、
これが効果を持つためには、決められた方式通りに書かないといけません。
そうしないと、法律は守ってくれないんです。
方式には次のようなものがあります。
普通方式として
1 自筆証書遺言
2 公正証書遺言
3 秘密証書遺言
特別方式として
1 危急時遺言
2 隔絶地遺言
それぞれ解説しましょう。
自筆証書遺言
これは、自分だけでできる遺言です。
他の方式だと、数万円かかってしまうことがあるので、十五歳の皆さんにはお金がかからないこの方式がおすすめです。
用意するものは、紙とペンと印鑑と封筒。
印鑑は、印鑑登録がしてある実印があればそれが一番良いんですが、さっきも言いましたが、印鑑登録するには成人の力を借りなければできません。
十五歳の皆さんはそんなものは持っていない人がほとんどでしょう。
せっかく大人的な権利を与えられたのにまた親に頼るんじゃ、ハイになってた気持ちが思いっきりローになってしまうかも。
でも大丈夫です。
無理に実印(印鑑登録がしてあるハンコ)じゃなくても、法律で良いことになっていますから、
文房具屋さんで100円~500円くらいで買ってきましょう。
もう中学を卒業していたら、卒業記念に印鑑をくれる学校もありますよね。
それでは、書いてみよう。
まず、書き方の基本です。
題名を「遺言書」と書きましょう。
せっかく書いても他の人にそれが何の書類なのかわからないと意味がありません。
中2病という位で、十五歳くらいの人間が、変に自分の世界に入り込んだ文章を書いていると、いつもの病気が出た落書きだな、と思われる恐れがあります。
中2は13か14だ、なんて、細かいことを言ってはいけません。
本人以外から見ると、誤差の範囲です。
遺言は書く内容を大きく2つに分けましょう。
前半では、法律で守ってもらえる財産の処分について。
後半では、残った人へ伝えたい気持ち。
まず、前半です。
物やお金、何をだれにあげるのかを書きましょう。
理由や思い入れなんかは、一言で書けるものならここに書いても良いのですが、長い話になるのならば、後半で書きましょう。
よくあるお年寄りの遺言では、ご先祖様の歴史に始まって、お世話になった方々へのお礼、息子や孫への希望などを延々と何ページにもわたって書き、
「そういう訳で、この青い万年筆は〇〇に遺贈する。」
・・・・万年筆一本で、残った人たちが数ページを読まされるわけです。
そして、また赤い万年筆を譲る理由が延々と続くわけです。
あなたの遺言はそんなことがないように、前半では財産と、あげる相手だけを書くのがおすすめです。
後半は、あなたの心を残った皆さんに伝えましょう。
ここに書くことは、法律には縛られません。
縛られませんが、ここで皆さんが感動してくれれば、前半に書いた財産を書いたとおりに分配してくれるでしょう。
思い残すことなく書き終わったら、日付を書きましょう。
西暦でも平成でもいいので、確実にその日と解るように書きましょう。
新しく言葉を習うと、すぐ使ってみたくなるものですが、
お爺ちゃんなんかがよく使う
「10月吉日」
なんか、格式がありそうで良いなあ・・・ダメです。
何日なのかわかりません。
日付を書いたら、住所と名前を書きましょう。
誰もが知っている有名人ならば、芸名などでもいいことになっていますが、学校で有名人くらいでは通用しないので、本名を書きましょう。
名前を書いたらハンコを押しましょう。
そこまでできたら、一度読み返して、満足したら封筒に入れましょう。
封筒に入れたらノリで封をして、念のためにさっきのハンコで封印をしておきましょう。
封筒には遺言書在中と書いて、自分の性格に合ったとことに置いておきましょう。
誰にでも見えるところへ置いておくと、明日家族会議かもしれませんし、庭に埋めておくと、ほんとに死んでも誰も見つけてくれないと思います。
その辺のバランスのいいところを考えましょう。
今日はちょっと長くなってしまったので、これくらいにしておきます。
次回(間に別のが入るかもしれませんが)、遺言を書くときの注意点をもう少しと、遺言が法律的にはどのくらい強いのか、についてお話しします。
その次に自筆証書遺言以外の方式についてお話ししようと思います。
それではまた。