十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その7 船舶遭難者遺言・隔絶地遺言




船舶遭難者遺言

海の旅は安全第一。

救命胴衣、救命ボートはしっかり確認しておきましょう。

それでもあなたは、いつ劇的最期を遂げることになるか、わかりません。

でも大丈夫。

そんなあなたのために、遺言には「船舶遭難者遺言」という方式があります。

船舶遭難者遺言は危急時遺言の一つです。

これに必要なのが、証人2人のみです。

つまり、たとえあなたが、あえない最期を遂げたとしても、

しっかり生き残る2名が必要だという事です。

そして、大きくほかの方式の遺言と違う所は、

口頭で遺言を伝えればいいのです。

筆記と、あなたや他の証人に対する読み聞かせは、その場では不要です。

のんきに書いたり読んだりしている暇があったら、逃げろ!!

と、言う事ですね。

たぶん、この場面は、沈みつつある船の中、

という想定でしょう。

そして、遺言の筆記や各証人の署名押印は後日生き残ってたらやります。

死んでたら無理ですね。

生き残った証人が遺言を作成したら、裁判所に提出してもらいます。

これははっきりとした期限が定まっていません。

条文では「遅滞なく」となっていますが、

国内地に上陸してから1か月以内が目安とされているようです。

隔絶地遺言

世間から離れたところで死にそうになって書く遺言です。

① 伝染病隔離者遺言

バイオハザードですね。

伝染病のため、行政処分によって交通を絶たれた場所に居る者

が、死にそうなとき書く遺言です。

警察官1人と、証人1人以上の立ち合いが必要です。

警察官が都合よく同じ隔離地域に居てくれるかどうかはわかりません。

これはぼくの考えですが、出来るだけ公職に近い人を呼んで、出来るだけ証人の人数を集めていれば、後に裁判所で認めてもらえる可能性は高くなると思います。

死にそうなあなたにいろいろな努力を求めるのも変ですが。



必要な頭数が揃ったら、遺言を書きましょう。

他の人に代筆をしてもらっても有効です。

書き終わったら、立会人、証人に署名、押印をしてもらいましょう。

あなたがもう、死にそうでへろへろ、署名押印なんか無理!

というときは、その事情を遺言に書き添えてもらいましょう。

これで出来上がりですが、もしもあなたがしぶとく生き残り、

普通方式の遺言が出来るようになったときには、

6か月でこの遺言の効力はなくなってしまいますので、

普通方式遺言を早めに作成しておきましょう。

普通方式遺言、覚えていますか?

自筆証書遺言

公正証書遺言

秘密証書遺言

の、どれかですね。

ちなみに、名前は「伝染病隔離者遺言」になっていますが

地震などで交通が遮断されてしまったときなども、この方式が認められるようです。

② 在船者遺言

宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長の最期、

のような場合ですね。

船自体は遭難しているわけではありません。

あなた以外は元気いっぱいの場合です。

この遺言を書くときは

船長または事務員1人及び2人以上の証人の立ち合い

が、必要です。

あなたが沖田艦長ならば、あなたが船長にあたるので、事務員1人が必要です。

この事務員という意味は、普通の会社の事務員とは少し違い、

船のそこそこの地位を持った乗組員のことを指します。

機関長なんかが良いでしょう。

人が揃ったら早速遺言を書きましょう。

あとは、伝染病隔離者遺言と同じです。

しぶとく生き延びたら、早めに普通方式遺言に書き換えましょう。





十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その6 一般危急時遺言





やばい状況にならないほうが良いけれど、人生、いつなんどきロックな状態になるかわかりませんよね。

そんなとき、今までお話ししたような教科書通りの遺言が書けるとは限りません。

そんな時のために、ルールをちょいとばかりゆるくした遺言の方式があるんです。

個人的な意見として、この時これができるのかい、というのがありますが、あくまでも法律は慎重です。

特別方式遺言の種類

死に際がロックンロールな状態になってしまった。

そんな時でも作成できる(かもしれない)、特別方式遺言というのがあります。

特別方式には、危急時遺言と隔絶地遺言というのがあります。

まずは危急時遺言、その中で、一般危急時遺言からお話しします。

危急時遺言

危急時遺言には、一般危急時遺言と船舶遭難者遺言というのがあります。

一般危急時遺言

ごく普通の状態で、あなたが死にそうだと思ったとき遺す遺言です。

家や病院の布団やベッドで死にそうなときですね。

もっとも、「死にそう」と言っても、いろいろですね。

とくに十五歳の皆さんは死にそうだと思うことはよくあるでしょう。

おなかがすいて死にそう。

恥ずかしくて死にそう。

でも、これじゃダメです。

法律では、

「遺言者が主観的に自己に死亡の危急が迫っていると判断すれば足りる。」

という事になっていますが、単なる予想程度では認められません。

お医者さんが、そろそろヤバいかもって言ったとか何か客観的にもやばいって解る状態じゃないとダメのようです。

そういうことなので、あなたが、自信を持ってもうすぐ死ぬ、と思うようならばこの一般危急時遺言を作成しましょう。



一般危急時遺言の作り方

① まず、証人を3人以上集めましょう。

死にかけているあなたがその時になって3人かき集めるのはかなり大変です。

たぶん無理でしょう。

そんな時のために、あなたが死にそうになったと聞いたら、せめて3人以上集まってくれるくらいの人気者になっておきましょう。

証人になる資格に関してはいつか詳しくお話しします。

取りあえず、成人であること、あなたの相続人などの、あなたの遺言で損したり得したりする人ではないことです。

そんな条件があるので、学校のお友達とばかり付き合ってないで、いろいろな年齢層の人とも仲良くなっておきましょう。

② 遺言者であるあなたが、証人の一人に対し、遺言を語って伝えます。

あなたは死にそうなのですから、手短にわかりやすく伝えましょう。

この日のために、自分の考えを短くまとめて、わかりやすく人に伝える練習をしておきましょう。

この練習は社会に出てもきっと役に立ちます。

「君の話は分かりやすくていいね。」

と、ほめられたら、

「はい、危急時遺言のために、いつも練習しております。」

と、元気な笑顔で答えましょう。

言いたいことは1分で!10倍伝わる話し方 [DVD]

 

 

③ 遺言を聞き取った人がこれを筆記します。

一字一句同じじゃなくても良いんです。

内容が合ってれば良いんです。

パソコンで打っても良いんです。

だから、聞き取り役は、気楽に引き受けてもらいましょう。

譲り合ってるうちにあなたが死んでしまったら何にもなりません。

もし、書き上がったものを訂正したいときは、証人が全員で寄ってたかって署名、押印を、してもらいます。

④ 書きあがった遺言書を、証人全員に読み聞かせ、または閲覧させます。

キチンと書けていたら、証人全員が署名押印をします。

あなたは死にかかっているので署名押印はしなくて結構です。

⑤ 遺言の日から二十日以内に、証人か、利害関係人が家庭裁判所に持っていき、確認してもらいます。

確認が終わったら、この遺言の完成!!です。

なお、あなたが危急状態から脱して、つまり、やっぱ大丈夫だったから普通方式の遺言ができるようになった時は、6か月経つと、ここで作成した一般危急時遺言は、効力がなくなります。

 

今回はこのくらいにしておきましょう。

このつぎは、危急時遺言の中の船舶遭難者遺言のお話しをします。

お元気で。



十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その5 秘密証書遺言




秘密証書遺言

秘密証書遺言、わあ、「秘密」だって!

なんか、めくるめく怪しい雰囲気がただよってますね。

十五歳と言えば、親に秘密にしておきたいことがたっぷり有る頃ですね。

秘密証書遺言なら、中身をだれにも秘密にできる

何を書いても誰にもばれません。

以前出てきた公正証書遺言では、公証人と証人2人の、最低3人の人に、何を書いたかばれてしまいます。

これならば、誰にも見られないで封をしてしまうことができます。

恥ずかしかったり、気まずかったりする心配はありません。

秘密証書遺言なら、パソコンで書ける

字い汚いし、漢字知らんし、あとで誰かに見られるんだからきれいに書きたいな。

大丈夫。

これならパソコンで書いても有効です。

何なら字がめちゃくちゃきれいなお友達に頼んで書いてもらっても大丈夫です。

その時には、その人の住所と氏名を記録しておいてください。

あとで、公証人に「筆者」として報告しなければいけません。

もし、パソコンを他の人に打ってもらったときも、その人が「筆者」になります。

ただ、その人に対しては秘密でなくなりますけどね。

秘密証書遺言なら、存在をなかったことにされない

自筆証書は、書いた後、人知れずまたはみんなに宣言して、密かにまたは堂々と保管しておきます。

これを、都合の悪い人が、無かったことにすることは可能なことです。

でも、秘密証書遺言の場合は、公証役場に記録がしっかりと残るので、遺言の存在があったことだけは、いつまでも証明できます。

相続人が公証役場に行って、「あいつの遺言ありますか?」って聞けば「ありますよ。」と、答えてくれます。

秘密証書遺言でも、書き方が悪いと無効になる

秘密証書遺言は誰にも見せずに、封をしてしまうから、どうやって書いてもオッケー

・・・・・ではないんです。

書き方は自筆証書遺言と同じと思ってください。

ただ、パソコンなどの道具を使って書いても良いし、人に代筆してもらっても良いというだけです。

形式は守らなければ無効になります。

訂正の仕方や、署名と捺印ですね。

自筆証書遺言よりややこしいのは、ハンコは実印が必要だという事です。



秘密証書遺言でも、お金がかかる

さて、問題のお金です。

公証役場に払うのが今、2016年10月で、1万1千円。

証人を2人連れて行かないといけないので、この人たちの報酬。

 秘密証書遺言でも、無くなるときは無くなる

公証役場のおじさんがやってくれるのは、あなたが確かに遺言を書いて、私たちが確認しましたよ、という記録を残すだけ。

保管をするのは、あなたです。

無くなったり、盗まれたり、焼けてしまったり、というのはあなたの責任です。

秘密証書遺言でも、裁判所のお世話になる

あなたが天国に昇るか地獄に落ちた後、残った人があなたの遺言を裁判所に持っていきます。

裁判所で、勝手に封を開けられていないか、署名、捺印なんかはきちんとされているかなどのチェックをして、ちゃんと有効な遺言かどうかを見てもらいます。

だから、手間は自筆証書遺言と変わりません。

結局、秘密証書遺言の良いところと良くないところを比べてみた結果、あまり人気はありません。

ぼくは遺言について、よく相談を受けますが、秘密証書遺言にしたいという人にはまだ会ったことがありません。

このつぎは、ドラマや映画ではよく出てくる「危急時遺言」や、「隔絶地遺言」について、お話ししようと思います。



十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その4 公正証書遺言





その3では「遺留分」というものについてお話ししました。

ここまでは、お金がほとんどかからない、自筆証書遺言についてのお話しでしたが、

今回からは、十五歳の皆さんからすると手が届かないかもしれない遺言、

万単位のお金がかかる、ゴージャス・セレブ遺言の「公正証書遺言」のお話しをします。

お坊ちゃま、お嬢様はお勉強しておきましょう。

公正証書遺言

なんか、堅そうな名前で大人の世界っぽいですね。

これははっきり言ってお金がかかります。

でも、用心深い大人の人たちは少しくらいお金がかかっても、一番確実で安心なこれを選ぶ人が多いんです。

何が確実で安心なんでしょう

公正証書遺言は、公証役場という所で作ってもらいます。

「作る」んじゃなくて、「作ってもらう」んです。

作る人は公証人という、法律の超専門家です。

前に弁護士とか、裁判官とか、検察官とかを長い間やっていた人で、すごい人なんです。

確実で安心その1

だから、遺言の内容が法律的に変なものだったりして、無効にならないように教えてくれます。

でも、十五歳の皆さんから見ると、お爺さんばっかりです。

長く法律関係の仕事をしていた人でないとなれないので、若手バリバリのイケメン公証人というのは存在しません。

女子はあまり期待しないでください。

その一流法律家の公証人に、あなたが書きたいことを言って伝えます。

それを公証人が筆記します。

その時に、内容や表現が法律的に変だったら、教えてくれるでしょう。

筆記が終わったら、間違いがないか、あなたと証人に読んで聞かせ確認します。

・・・「証人」・・・

証人ってどんな人がなれるんでしょう。

遺言の内容によって、得したり損したりしない人です。

親戚関係だとなかなかねえ、という人は

ぼくみたいな行政書士とか、弁護士さんとかにお願いすることが多いですね。

なんでか?

行政書士とか弁護士には

「守秘義務」

というのがあるんですね。

仕事上で知った秘密は漏らしちゃいけない、ということです。

守らなきゃ、業界追放!なんてこともあり得ます。

と、言うことで、間違いがなければ、

あなたと証人全員が署名しハンコを押します。

遺言が完成したらこの原本は公証役場に保管されます。

安心で確実その2

したがって、遺言書の置き場を知っている誰かがコソッと中身を書き換えるという事は、不可能になります。



そして、この原本とは別に、平成26年4月1日から電磁記録化(データ化)したものも保存されることになりました。

安心で確実その3

そのために、あなたの遺言が紛失したり、滅失したりする危険がなくなりました

この遺言を作成したのち、あなたが天国に召された、または地獄に突き落とされたとしましょう。

そのとき、以前にお話しした「自筆証書遺言」ならば、遺言書を裁判所に持っていき、「検認」と言って、法律的に有効な遺言書かどうかを判断してもらわないといけません。

安心で確実その4

公正証書遺言なら、作成するときに法律家のチェックを受けているので、そのまま有効になります。

こんな具合に公正証書遺言は、

お陀仏の後は、安心・確実・スピーディーなんですね。

ただし、十五歳のあなたにはいくつかのハードルがあることに気が付いたでしょう。

お金が必要。

実印が必要。

証人が必要。

・・・結構大変です。

取りあえずは、自筆証書遺言を書いておきましょうか。

次回は、

「秘密証書遺言」

から、お話ししようと思います。



十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その2 相続人ってだれ?





十五歳になった皆さん、

今日も元気に遺言を書きましょう。

前回はお金もかからずに、お手軽な自筆証書遺言、つまり、自分で書いて自分で保管しておく遺言の書き方をざっくりと説明しましたよね。

今回は、その自筆証書遺言を書くときの注意をお話しします。

それから、遺言は法律的には、どの程度強いのか、

その辺をお話ししようと思います。

以前のお話しと重複する部分もありますが、復習するつもりで読んでください。

 

自筆証書遺言(自分で書いて、自分で保管する遺言)で、気を付けること。

1 ぜ~んぶ自分で書きましょう

一文字も、他の人に書いてもらってはいけません。

すべて自分の文字でないと無効になってしまいます。

つまり、パソコンを使って入力し、プリントアウトしたものも、絶対だめです。

字が下手で人に見られるのが嫌でも、これだけは自分で書きましょう。

また、動画や音声は、遺言としては使えません。

しつこく言いますが、必ずあなたの字で書きましょう。

2 日付は必ず年月日で書きましょう。

お年寄りがついつい書きたがるのが、「吉日」。

これはダメです。何日なのかわかりません。

人によって「吉」の日は、違いますからね。

「キティちゃんの誕生日」なんてのもダメですよ。

平成か西暦かも、はっきり書きましょう。

3 訂正はやり方が決まっています。

あっ、間違えた!

グシャグシャっと黒く塗りつぶして・・・・だめです。

修正テープで上から書いて・・・・だめです。

昔ながらの砂消しゴムでけずって・・・・だめです。

 

まず、間違えた部分を二本線で消して、その上の行間に正しいのを書きます。

その二本線にかかるようにハンコを押します。

その行の終わりの空欄に「○字削除、○字加入」と書きます。

2ケタの数字は2文字として数えます。

そこに、名前をかいて、ハンコを押します。

間違えるたびにこれをやります。

 

4 法律で守ってくれるのはこれ

前回、遺言は大きく2つに分けて、前半は財産をどうするか、事務的なこと

後半は、残った人たちに言い残しておきたい、どちらかというと感情的なこと

を書くといいと、言いましたよね。

ただし、後半で感情的になりすぎて、前半に書いたことと矛盾することを書いて、意味不明にならないように、気を付けましょう。

そういう遺言は、最低でも矛盾する場所は無効、無かったことにされてしまいます。

最悪、全部だめ、紙くずになってしまいます。

 

法律で守ってくれるのは、前半の事務的なことです。

簡単に言うと、どの財産を誰にあげるか決める、ということです。

5 法律は、あなたの遺言も守っているけど、あなたの家族も守っています。

もし、遺言を書かなかったら、法律で決められた人に決められた割合で、あなたの莫大な財産は分けられることになっています。



その、法律で決められた人のことを、「法定相続人」と言います。

これは、順番があって、第一順位の人が居なかったら第二順位、それも居なかったら第三順位、ということになります。

つまり、第一順位の人が居れば、第二、第三順位の人は関係なし、ということです。

まず、一番重要なのが配偶者、つまり、奥さんとか、旦那さん。

これを読んでいる人は一応十五歳ということになっているのですが、

何かの間違いで二十歳とか四十歳とか、そういう人が読んでいた時のために、奥さんとか、子供とかも計算に入れておきましょう。

それでは、順番に行きましょう。

第一順位

奥さんと子供

奥さんが2分の1、子供が2分の1の割合で分けます。

子供が2人とか3人とか、6人とか、うじゃうじゃいた場合とか、

何人いても子供の分、つまり2分の1を人数で均等に分けます。

奥さんは、子供が何人いても2分の1です。

もし、子供が死んでしまっていたら、孫が代わりに受け取ります。

孫も死んでいたら、ひ孫が受け取ります。

ひ孫も死んでいたら、玄孫(やしゃご、つまり、ひ・ひ孫)が受け取ります。

玄孫も死んでいたら・・・・・・・・と、永遠に子孫に受け継がれます。

その時この世に生きていればですけど。

ちなみに、おなかの中の子供は人数に入れるの?

と、思うかもしれませんね。

このおなかの中の子は、人数に入れておいてください。

めでたく生きて産まれてきたら、仲間に入れてあげてください。

流産など、残念な結果に終わってしまったら、相続に関する法律では最初からいなかったことになります。

法律は冷たいところがありますよね。

奥さんがもういなくて、(死んだとか、離婚したとか)子供だけのときは、子供が全部受け取ります。

もはや、十五のあなたの話ではなくなってきましたけど、ご参考まで。

第二順位

奥さんと親(つまり、子供がいない)

奥さんが3分の2、親が3分の1を、受け取ります。

十五歳のあなたの感覚では、えっ親すくなっ、て思うかもしれませんが、法律考えた人は、親はお金があって、奥さんはあなたが養っているというのを想像しているんでしょうね。

奥さんがいない場合は、親が全部受け取ります。

今度は子や孫のときと一緒で親が居ないときはお爺ちゃんお婆ちゃん、

それもいないときは、ひいお爺ちゃん、ひいお婆ちゃん、

それもいないときは、ひいひいお爺ちゃん、ひいひいお婆ちゃん

それもいないときは・・・・・どんだけ長生きなんだって。

とにかくご先祖様をどんどんたどっていきます。

第三順位

奥さんと兄弟姉妹。

奥さんが4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

兄弟姉妹がたくさんいれば、4分の1を人数で割ります。

兄弟姉妹はあなたと同格、同じ戦闘力を持っているのだから、遺産をあげなくても自分で強く生きていけるでしょう、という考え方でしょうか。

兄弟姉妹にあなたの思い出をちょっとだけ分け与えましょう、という感じですか。

あ、この考え方は、完全にぼくの妄想ですから、あなたが勝手に別の解釈をしてもかまいませんよ。

もしも、兄弟姉妹があえなく死んでしまっていたら、その子供、つまり甥や姪が代わりに受け取ります。

もし、甥や姪が死んでしまっていたら、その子供・・・にはなりません。

この場合は、ここでストップです。

子孫を手繰って行ったりしません。

 

ここまでが法定相続人というものです。

あなたが何もしないで昇天した場合(地獄に落ちる人も含みます)、

原則的にあなたの財産はこのように分けなければいけないことになっています。

ただし、原則的に、ということで、原則には例外もありますから、それはいつかお話しします。

 

完全に中途半端ですが、まだまだ先がありますので、今回はこのくらいにして、続きは「十五歳だ、さあ、遺言を書こう。その3」に取っときましょう。



十五歳だ。さあ、遺言を書こう。その1 自筆証書遺言




十五歳の大人的権利

十五歳の誕生日おめでとうございます。

ぼくが十五歳のときには

「昔だったら元服の歳だな」

と、よく言われました。

皆さんのお父さん、お母さんはまだ若いから、たぶんそんなことは言わないでしょうね。

おじいちゃん、おばあちゃんだったら、もしかしたら言うかもしれません。

元服は、武家の時代の成人式のようなものです。

dscf1670

そう、十五歳で大人として認められ、責任も負いました。

もしかして、やらかしちゃったときには、責任をとって腹を切ったかもしれません。

そんな十五歳、現代の社会で大人として認められることは、何かあるのでしょうか。

十五歳になったら、遺言を書けます。

印鑑登録をして、実印を作ることもできるようにはなりますが、法定代理人の承諾が必要など、あなただけの意思ではできません。

法定代理人というのは、

成人にならないとできない契約などの手続きを代わりにやってくれたり、

あなたが何かやらかした時には、代わりに責任をとって賠償金を払ってくれたりする、ありがたい人です。

多くは、皆さんの保護者と言われている人たちです。

 

遺言はあなただけの意思で作ることができます。

十五歳の唯一の大人的権利かもしれません。

 

遺書?遺言?何が違うの?

ここで「遺書」と「遺言」の違いをお話ししましょう。

これらを並べて字面、漢字の意味だけ見ると、

「遺書」なんだから、書けば遺書で、「遺言」なんだから、言えば遺言じゃないのって納得してしまいそうだけど、そこで納得してはいけません。

 

「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。」

と、いうのが遺書です。

「ぼくが死んだら、艦これグッズすべてを田中太郎君にあげる。抱き枕にしているダイオウグソクムシのぬいぐるみは花田花子ちゃんにあげる。」

と、いうのが遺言です。

そして、遺書は残された人に対するお手紙にすぎません。

お礼、お詫び、心残り、恨みつらみなどなど。

うまく行けば日本中を感動の渦に巻き込むことができるかもしれませんが、

「はいはい、ごくろうさん。」

と、ごみ箱に捨てられても、法律的には何の問題もないのです。

 

それに対して遺言は法律が守ってくれる、立派な書類なんです。

十五歳のあなたが作った書類を、裁判所などが法律で守ってくれるんです。

すごいでしょ。

遺言書を破ったり捨てたり隠したりすると、法律で罰せられるんです。

 

ただし、守ってくれるのは財産の事だけです。

花子ちゃんは一生ぼくのことを忘れないでください、

というのは

「3歩あるいたから忘れた。」

と言われても仕方がありません。

 

遺言自由の原則

遺言は、十五歳以上になれば、いつでもだれでも自由にすることができます。

また、たとえあなたがだれにも負けない優柔不断マンだとしても

いつでも撤回することもできるので安心してください。

しかも、その撤回する権利をだれも奪うことはできません。

ただし、撤回する時は、もう一度きちんと遺言として書かないといけません。

そして、あとから書いたほうが正しい遺言だというあつかいになります。

だから、書いた時がはっきりわからなければいけません。

 

遺言の方式

遺言というのは好き勝手に書いたら良いのかというと、そういうわけではなく、

これが効果を持つためには、決められた方式通りに書かないといけません。

そうしないと、法律は守ってくれないんです。

方式には次のようなものがあります。

普通方式として

1 自筆証書遺言

2 公正証書遺言

3 秘密証書遺言

特別方式として

1 危急時遺言

2 隔絶地遺言

それぞれ解説しましょう。

 




自筆証書遺言

これは、自分だけでできる遺言です。

他の方式だと、数万円かかってしまうことがあるので、十五歳の皆さんにはお金がかからないこの方式がおすすめです。

用意するものは、紙とペンと印鑑と封筒。

印鑑は、印鑑登録がしてある実印があればそれが一番良いんですが、さっきも言いましたが、印鑑登録するには成人の力を借りなければできません。

十五歳の皆さんはそんなものは持っていない人がほとんどでしょう。

せっかく大人的な権利を与えられたのにまた親に頼るんじゃ、ハイになってた気持ちが思いっきりローになってしまうかも。

でも大丈夫です。

無理に実印(印鑑登録がしてあるハンコ)じゃなくても、法律で良いことになっていますから、

文房具屋さんで100円~500円くらいで買ってきましょう。

もう中学を卒業していたら、卒業記念に印鑑をくれる学校もありますよね。

 

それでは、書いてみよう。

まず、書き方の基本です。

題名を「遺言書」と書きましょう。

せっかく書いても他の人にそれが何の書類なのかわからないと意味がありません。

中2病という位で、十五歳くらいの人間が、変に自分の世界に入り込んだ文章を書いていると、いつもの病気が出た落書きだな、と思われる恐れがあります。

中2は13か14だ、なんて、細かいことを言ってはいけません。

本人以外から見ると、誤差の範囲です。

 

遺言は書く内容を大きく2つに分けましょう。

前半では、法律で守ってもらえる財産の処分について。

後半では、残った人へ伝えたい気持ち。

 

まず、前半です。

物やお金、何をだれにあげるのかを書きましょう。

理由や思い入れなんかは、一言で書けるものならここに書いても良いのですが、長い話になるのならば、後半で書きましょう。

よくあるお年寄りの遺言では、ご先祖様の歴史に始まって、お世話になった方々へのお礼、息子や孫への希望などを延々と何ページにもわたって書き、

「そういう訳で、この青い万年筆は〇〇に遺贈する。」

・・・・万年筆一本で、残った人たちが数ページを読まされるわけです。

そして、また赤い万年筆を譲る理由が延々と続くわけです。

あなたの遺言はそんなことがないように、前半では財産と、あげる相手だけを書くのがおすすめです。

後半は、あなたの心を残った皆さんに伝えましょう。

ここに書くことは、法律には縛られません。

縛られませんが、ここで皆さんが感動してくれれば、前半に書いた財産を書いたとおりに分配してくれるでしょう。

思い残すことなく書き終わったら、日付を書きましょう。

西暦でも平成でもいいので、確実にその日と解るように書きましょう。

新しく言葉を習うと、すぐ使ってみたくなるものですが、

お爺ちゃんなんかがよく使う

「10月吉日」

なんか、格式がありそうで良いなあ・・・ダメです。

何日なのかわかりません。

日付を書いたら、住所と名前を書きましょう。

誰もが知っている有名人ならば、芸名などでもいいことになっていますが、学校で有名人くらいでは通用しないので、本名を書きましょう。

名前を書いたらハンコを押しましょう。

そこまでできたら、一度読み返して、満足したら封筒に入れましょう。

封筒に入れたらノリで封をして、念のためにさっきのハンコで封印をしておきましょう。

封筒には遺言書在中と書いて、自分の性格に合ったとことに置いておきましょう。

誰にでも見えるところへ置いておくと、明日家族会議かもしれませんし、庭に埋めておくと、ほんとに死んでも誰も見つけてくれないと思います。

その辺のバランスのいいところを考えましょう。

 

今日はちょっと長くなってしまったので、これくらいにしておきます。

次回(間に別のが入るかもしれませんが)、遺言を書くときの注意点をもう少しと、遺言が法律的にはどのくらい強いのか、についてお話しします。

その次に自筆証書遺言以外の方式についてお話ししようと思います。

それではまた。



解り難い数字や言葉をわかりやすくしてみました。災害情報。





当然のように使われている数字、言葉。

普段疑問も持たないけど、結局それはどれくらい?それはどういう意味?というのはありませんか?

例えば災害情報。

台風が近づくと、気象情報で最大風速何メートルと言います。

なんだか、大変な風らしいけどどの程度なんでしょうか?

また、災害情報が発表されることがありますが、その言葉、結局どういう意味で自分は何をすればいいのでしょうか?

風速50メートル

風速50メートル、この数字は実感として、どんなものなんでしょうか。

時速に換算してみます。

50メートル×60秒×60分=180000メートル=180キロメートル

時速180キロですね。

初代新幹線が時速200キロ。

だいたい近いですね。

つまり、初代新幹線の屋根の上に家を建てて、歩き回るようなもんですね。

ほとんど狂気です。

たまに風速70メートルなんていうのも観測されますよね。

これだと時速252キロ。

比較的新しい新幹線の屋根の上ですね。

家が建っているのが不思議です。

これで外出するのは完ぺきに狂気です。

気象情報を聞きながらひきこもりに徹しましょう。

避難準備情報

最近の台風で大きな被害を出した高齢者施設。

施設の方には避難準備情報の意味が解らなかったことが、避難が遅れてしまった一因だそうです。

特に予備知識がない人は、この言葉からどういう行動をとるでしょうか。

「避難準備」ですから、貴重品をまとめてビニール袋で防水して、いつでも逃げられるように服装を整えて、雨合羽を用意して、最低限の着替えや食料をリュックに入れて、懐中電灯を用意して、靴を用意して、など、・・・・・よし、大丈夫。

これが日本語を理解する人がおこなう避難準備でしょう。

たぶん、たくさんの高齢者の命を預かる施設の職員さんたちは、きっとこのような「避難準備」をしていたことでしょう。

同じ立場なら、ぼくもそうします。

抜かりなく避難準備は出来ているかなって何度も確認して。

ところがこの台風による悲惨な災害が起こった後、マスコミなどを通じて、

避難準備情報の定義とは

「避難に時間がかかる高齢者等を事前に避難させること」

なのだということが繰り返し報道されるようになりました。

もう、「えっ、そうなんですか?・・・・・」という感じです。

日本語としての「避難準備」には、まったくそんな意味は含まれていませんから。

 

検索して、内閣府のページで、定義を見ました。



「避難準備(要援護者避難)情報」

名前の様子が今まで聞いていたのと違います。

要援護者避難情報なんて、気象情報で聞いたことがありません。

住民に求める行動として、

要援護者等、特に避難行動に時間を要する者は、計画された避難場所への避難行動を開始(避難支援者は支援行動を開始)

と、なっています。

 

他の自治体の案内を見てみました。

ぼくの地元、山口県では

「災害時要配慮者は、立ち退き非難する。」

となっています。

しかし、鹿児島県肝付町では

「拘束力:弱。事態の推移によっては避難勧告や避難指示を行うことが予想されるため、避難の準備を呼びかけるものです。」

となっています。

肝付町のものは一般の人の解釈に近く、山口県のものは、内閣府の定義に沿っているという感じです。

どちらにしても、いくら自治体が内閣府の定義を理解して書類を作ったとしても、日本語として聞いたとき、ほとんどの人に内容が伝わらないものは、人の命を左右する言葉としては、まったく用を成さないものでしょう。

早い改正を望みます。

 

解り難く、実感し難い数字や言葉、災害用語に限らず生活の中でいろいろありますよね。

気が付いたらまた書きたいと思います。それでは今日はこれで。