船舶遭難者遺言
海の旅は安全第一。
救命胴衣、救命ボートはしっかり確認しておきましょう。
それでもあなたは、いつ劇的最期を遂げることになるか、わかりません。
でも大丈夫。
そんなあなたのために、遺言には「船舶遭難者遺言」という方式があります。
船舶遭難者遺言は危急時遺言の一つです。
これに必要なのが、証人2人のみです。
つまり、たとえあなたが、あえない最期を遂げたとしても、
しっかり生き残る2名が必要だという事です。
そして、大きくほかの方式の遺言と違う所は、
口頭で遺言を伝えればいいのです。
筆記と、あなたや他の証人に対する読み聞かせは、その場では不要です。
のんきに書いたり読んだりしている暇があったら、逃げろ!!
と、言う事ですね。
たぶん、この場面は、沈みつつある船の中、
という想定でしょう。
そして、遺言の筆記や各証人の署名押印は後日生き残ってたらやります。
死んでたら無理ですね。
生き残った証人が遺言を作成したら、裁判所に提出してもらいます。
これははっきりとした期限が定まっていません。
条文では「遅滞なく」となっていますが、
国内地に上陸してから1か月以内が目安とされているようです。
隔絶地遺言
世間から離れたところで死にそうになって書く遺言です。
① 伝染病隔離者遺言
バイオハザードですね。
伝染病のため、行政処分によって交通を絶たれた場所に居る者
が、死にそうなとき書く遺言です。
警察官1人と、証人1人以上の立ち合いが必要です。
警察官が都合よく同じ隔離地域に居てくれるかどうかはわかりません。
これはぼくの考えですが、出来るだけ公職に近い人を呼んで、出来るだけ証人の人数を集めていれば、後に裁判所で認めてもらえる可能性は高くなると思います。
死にそうなあなたにいろいろな努力を求めるのも変ですが。
必要な頭数が揃ったら、遺言を書きましょう。
他の人に代筆をしてもらっても有効です。
書き終わったら、立会人、証人に署名、押印をしてもらいましょう。
あなたがもう、死にそうでへろへろ、署名押印なんか無理!
というときは、その事情を遺言に書き添えてもらいましょう。
これで出来上がりですが、もしもあなたがしぶとく生き残り、
普通方式の遺言が出来るようになったときには、
6か月でこの遺言の効力はなくなってしまいますので、
普通方式遺言を早めに作成しておきましょう。
普通方式遺言、覚えていますか?
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
の、どれかですね。
ちなみに、名前は「伝染病隔離者遺言」になっていますが
地震などで交通が遮断されてしまったときなども、この方式が認められるようです。
② 在船者遺言
宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長の最期、
のような場合ですね。
船自体は遭難しているわけではありません。
あなた以外は元気いっぱいの場合です。
この遺言を書くときは
船長または事務員1人及び2人以上の証人の立ち合い
が、必要です。
あなたが沖田艦長ならば、あなたが船長にあたるので、事務員1人が必要です。
この事務員という意味は、普通の会社の事務員とは少し違い、
船のそこそこの地位を持った乗組員のことを指します。
機関長なんかが良いでしょう。
人が揃ったら早速遺言を書きましょう。
あとは、伝染病隔離者遺言と同じです。
しぶとく生き延びたら、早めに普通方式遺言に書き換えましょう。